心優しいお爺さんお婆さんと意地悪で欲張りなお爺さんが、不思議な力を持った犬をきっかけに、前者は幸福に後者は不幸になるという勧善懲悪の昔話です。
昔々あるところに、人の良いお爺さんとお婆さんがいました。
二人には子供がいなかったので、シロという犬を自分たちの本当の子供のように可愛がっていました。
ある日、お爺さんがいつものように畑で仕事をしていると、一緒についてきていたシロが大きな木の下で「ここ掘れ、ワンワン!」と鳴いたのです。
お爺さんがそこを掘ってみると、なんと大判小判がザクザク出てきたのです。
それを知った隣の欲張りなお爺さんは、シロを無理矢理に畑へ連れて行ってしまいました。
そして、嫌がるシロがキャンキャン鳴いたところで畑を掘ると、こんどは臭いゴミがたくさん出てきました。
怒った欲張りお爺さんは、なんとシロを殴り殺してしまいます。
人の良いお爺さんとお婆さんはとても悲しみ、シロをていねいに埋めて木を植えお墓を作ってあげました。
するとその木がみるみる育って大木になり、夢に出てきたシロはその木で臼を作るように言ったのです。
お爺さんとお婆さんは言われてとおりに臼をつくって、シロが大好きだったお餅をつきました。
するとどうでしょう、お餅のなかから財宝だたくさん出てきたのです。
それを知った隣の欲張りお爺さん、こんどは臼を無理矢理に持って行き餅をつきます。
しかし財宝は出てきません。
これに怒った欲張りお爺さんは、臼を叩き割って燃やしてしまいました。
人の良いお爺さんとお婆さんが臼を返してもらいにきたのですが、臼が灰になってしまったのを知ってとても悲しみます。
せめて灰だけでもと、真っ白な灰をザルに集めて持ち帰りました。
「おばあさんや、シロの臼が灰になってしまったよ」
こういってお爺さんはシロのお墓に灰を持って行きますと、どこからか風が吹いてきて枯れ木にフワリとかかりました。
するとどうでしょう。灰のかかった枯れ木には、満開の花が咲いたのです。
お爺さんは嬉しくなって「枯れ木に花を咲かせましょう」と言いながら灰を撒き、美しい花を咲かせてまわったのです。
ちょうど通りかかったお殿様がその様子を見て、とても喜びお爺さんにたくさんの褒美をあげました。
それを見て自分も褒美が欲しくなった欲ばりお爺さんは、無理矢理に灰を取り上げて灰をいっせいにまきました。
すると花が咲かないどころか、灰がお殿様や家来の目や鼻に入って大変な騒ぎになりました。
欲ばりなお爺さんは、とうとう牢屋に入れられたしまったそうです。
わが子同然の犬を惨殺されて文句一つ言わないお爺さんお婆さんと、欲張りなお爺さんとの対比がかなり極端ではありますが、まさに勧善懲悪のお話です。日本の民話においては白い動物は神の使いとされることが多いですが、シロもそのような存在として書かれていたのかもしれませんね。