笠地蔵は、心優しいお爺さんとお婆さんが、地蔵に笠を被せてあげて、その恩返しを受けるというお話ですね。舌切り雀や花咲か爺さんと異なるのは、善悪の対比ではなくて、純粋に良い事をする者は救われるというところです。
ではまた、簡単にあらすじをご紹介したいと思います。
昔々ある所に、貧乏だけど心優しい、お爺さんとお婆さんがいました。
ある年の大晦日、お爺さんとお婆さんは、二人で笠を作りました。
笠を町で売って、お正月のお餅を買うつもりでした。
二人で作った五つの笠を持って、お爺さんは町に出かけることにしました。。
お婆さんはお爺さんを見送ります。
「それではお願いしますね。今夜は雪になりますから、気をつけて下さい」
お爺さんが家を出てまもなく、雪が降ってきました。
雪はだんだん激しくなったので、お爺さんはせっせと道を急ぎました。
村はずれまでくると、お地蔵様が七つ並んで立っており、お地蔵様の頭に雪が積もっています。
これを見たおじいさんは、そのままにしておく事が出来ませんでした。
「お地蔵様。雪が降って寒かろうな。せめて、この笠をかぶってくだされ」
お爺さんはお地蔵様に、町で売るつもりだった笠をかぶせてやりました。
でも、お地蔵さまは七つなのに、笠は五つしかありません。
そこでお爺さんは、自分の笠を一つのお地蔵様に、手ぬぐいを最後のお地蔵様にかぶせてやりました。
家へ帰ると、お婆さんが驚いて言いました。
「まぁ、ずいぶん早かったですねぇ。それに、お爺さんの手ぬぐいはどうしたんです?」
お爺さんは、お地蔵様のことを話してやりました。
「まあまあ、それは良い事をしましたねえ。お餅なんてなくてもいいですよ」
お婆さんは言いました。
その日の夜中、お爺さんの家の前で何か重いものを置く大きな音がしました。
お爺さんがそっと戸を開けてみると、お爺さんのあげた笠をかぶったお地蔵様の後ろ姿が見えたのです。
そして、そこにはお正月用のお餅やごちそうとたくさんの財宝が置いてあったそうです。
このお話にもいくつかのパターンがあって、お地蔵様の数も五つから七つまであったり、笠だけのバージョンや手ぬぐいもかぶせるバージョンなど様々です。
どちらにしても、純粋に正しい行いをする者は救われるという展開はある種の仏教思想に基づくもので、子供に対して道徳を諭す寓話という要素が強いのだと思います。